靴は外側も内側もケアが必要お気に入りの靴は、どんな素材の靴でも(本革や合皮など)大切に履いていきたいです。靴をより長く履いていくためには、「ケア」が大切です。「ケア」というと、多くの方は汚れ落としで汚れを落としたり、クリームを塗って磨いたりなど、特に外側のケアをイメージするのではないでしょうか。ただ、意外と知らず忘れがちなのが、靴の内側のケア。内側からも靴は傷んでいきます。内側のケアもしっかりとおこなうことが、大切な靴を永く履いていくためのポイントです。今回、大手靴メーカーの販売員でもあった私がケアについて詳細を書きました。1. 意外と知らない な外側のケア1-1. 靴の外側予防をするスニーカーでもビジネスシューズでも、外で履けば当然、埃や汚れがつきます。磨けば問題ないのですが、毎回磨くのも手間と思う方も多い印象です。少しでも磨く手間を少なくするには予防が重要です。予防は磨いた後や出かける前に、一手間かけて『撥水スプレーや防水スプレー』をかけることです。撥水スプレーや防水スプレーは、「水対策」として雨の日に使用すると思われがちですが、実は埃や汚れが付きにくくなる効果もあります。埃や汚れが付きにくくなれば、その分、磨く頻度も少なくなります。つまり「埃・汚れ対策」としての予防になるのです。メーカーにもよりますが、例えばリーガルで販売しているものだと、晴れの日なら10日ほどは効果が持続します。もちろん、雨の日だと流れ落ちてしまうので、次に履くときにはスプレーを再度かけるようにしましょう。1-2. 撥水スプレーと防水スプレー、どちらを選べば良いの?「撥水スプレー」と「防水スプレー」は何が違うの? という質問をよく受けます。結論から言えば、厳密には違いがありますが、どちらを使っていただいても良いです。ただ、違いを把握した上で使いたいという人もいると思うので、簡単に説明しますね。● 撥水スプレー繊維の表面にコーティングを形成し、水を弾く雨や水しぶき・埃や汚れを防ぐことができる通気性を保ちやすく、蒸れにくい強い水圧には弱く、長時間水にさらされると水が染み込んでしまう比較的持続効果が短い(数日~数週間)ため、定期的な塗り直しが必要※ 撥水スプレーは普段使いに適しています。● 防水スプレー繊維の隙間を埋めて水を通さなくする雨や水しぶき・埃や汚れを防ぐことができる撥水スプレーよりも水を通しにくい繊維の隙間を埋めるため、通気性が悪くなりやすい撥水スプレーよりも効果が持続しやすく、塗り直しの頻度が少ない(数週間~1か月以上)※ 大雨の日やアウトドアに出かける場合に適しています。1-3. 撥水スプレーか防水スプレーかどちらを選ぶ?普段使いという点からいうと撥水スプレー扱いやすいでしょう。特に大雨やアウトドアに出かけるなど特別な場面でなければ、撥水スプレーで十分です。1-4. どの撥水スプレーを選べば良い?撥水スプレーはアマゾンや東急ハンズなどでも靴ケア用品が多く扱われているため、比較的簡単に手に入るでしょう。今回は有名なコロンブス社の商品で、撥水スプレーをご紹介します。コロンブスベーシック 防水・撥水スプレー(ウォーターストップ)フッ素系撥水・撥油剤が繊維を1本1本コーティングしてくれて、水や埃、油系の汚れから守ってくれます。さらに、素材の通気性や柔軟性が損なわれにくいのが特徴です。スニーカーケア プロテクトミスト基本的にはスニーカーの手入れ剤ですが、フッ素樹脂が浸透し、水や汚れを防ぐ効果をもたらします。スニーカーケア プロテクトスプレーフッ素系撥水・撥油剤が水や埃・汚れから守ってくれます。さらにUV吸収剤が入っているため、色あせを抑えてくれます。素材の通気性や柔軟性も損なわれにくいのが特徴です。※ 靴には靴専用のスプレーを使うようにしましょう。靴以外の製品用スプレーにはアルコールが含まれている場合があり、シミになってしまう可能性があります。1-5. 撥水スプレー・防水スプレーの使い方のポイント撥水スプレーや防水スプレーは、ただかければ良いというものでもありません。適当にかけてしまうと効果が薄くなってしまいます。スプレーは一度だけだとムラが出てしまい、効果が薄くなることがある一度全体に塗布した後、可能であれば2~3時間ほど(時間がないときは最低でも15~20分)乾かして定着させ、もう一度全体に塗布して乾かす2度塗りすることによって、効果がより高まります。ぜひ試してみてくださいね。1-6. クリームを塗るとき(磨くとき)のポイント靴にクリームを塗る際、汚れや残留しているクリームやスプレーを落とさないままクリームを塗ってしまう(いわゆる重ね塗り)ことがあります。靴は基本的に「お肌・化粧と同じ」とイメージしてもらうと良いでしょう。前の化粧を落とさずに重ね塗りすれば、毛穴が詰まって肌が呼吸できなくなり、肌荒れを起こしやすくなりますよね。さらに、厚くなった層のせいでひび割れも起こりやすくなります。靴も同様です。残留しているクリームやスプレー、汚れを落とさずにクリームを塗って磨いてしまうと、靴が傷みやすくなり、ひび割れも起こりやすくなってしまうので、クリームを塗る前にはしっかりと「汚れ落とし」で汚れを落としてからクリームをつけて磨くようにしましょう。2. 意外と知らない靴の内側ケア2-1. 靴の予防(内側)をしよう外側のケアはしても忘れがちなのが内側のケアです。内側のケアを怠ると、やはり靴が傷みやすくなり寿命を縮めてしまいます。どんな通気性の良い靴でも1日履けば必ず「湿気」がたまります(靴が湿気を吸ってしまう)。イメージとしては、小さいペットボトル(280ml)の3分の1ほどの水分(湿気)を、靴が吸収していると思っていただけると分かりやすいでしょう。それだけの湿気を放置すれば、当然カビが生えやすくなったり、内側が湿気を放置したままの状態でボロボロになってしまうこともあり得ます。つまり、1日履き終わった靴はしっかりと湿気を取るようにすることが、靴の劣化を防ぐポイントです。特に雨の日に履いた場合は、さらに湿気や水分を吸収しているので、予防が重要になります。2-1. なるべく新聞紙は避ける靴の中の湿気や水分を取るために、新聞紙を丸めて入れるという話を聞きます。確かに、新聞紙は湿気や水分を吸収してくれるので効果はあります。ただ、靴の販売員をしていた私からするとその後、靴に問題が出た方も一定の割合でいるため、お勧めしません。理由は「新聞のインクが靴に移る」からです。新聞を入れた後、白い靴下で靴を履くと、靴下が何となく黒ずんでいた方もいます。新聞紙しかない場合は、インクがうつらないようにティッシュペーパーで新聞紙を何度か包んで使うようにしましょう。2-2. 何を使えば良い?靴の中に入れるなら、吸水性のある紙が良いです。靴を購入する際にある無地の紙なども良いです。ただし、入れっぱなしだと湿気や水分を吸った紙を入れ続けることになってしまうので、ある程度湿気や水分を吸ったのが確認できたら取り除くようにしましょう。そして、紙よりも「シュードライ」を使うほうがおすすめです。シュードライは吸水性に優れているので、しっかりと湿気や水分を取ることができますただ、長時間、入れ続けると靴の適度な水分まで奪ってしまい、傷みやすくなるので注意してください。2-3. ドライヤーや直射日光はNGドライヤーや直射日光で乾燥させるのはNGです。急激に乾かすと革が硬くなったり、ひび割れを起こしやすくなってしまいます。シュードライを使っても完全に乾くわけではないので、最終的には風通しの良い日陰で乾かすようにしましょう。2-4. 乾かすときの注意点風通しの良い日陰で靴を乾かすときも、少し注意が必要です。そのまま乾かすと型崩れを起こしてしまう可能性があります。よくあるのが、シューキーパーを入れずに直射日光の当たる場所に斜めに立てかけて乾かすケース。半日〜1日ほど経つと、靴が曲がって(反って)しまい、さらに革がパリパリになってしまった…ということもあるでしょう。乾かすときは必ずシューキーパーを入れて乾かすようにしましょう。ただし、どんなシューキーパーでも良いわけではありません。かかと全体にフィットするタイプを選ぶようにしましょう。木製のシューキーパーは均一に負荷がかかり、型崩れが起きにくいです。また、乾かし過ぎにも注意が必要です。特に本革製品には、ある程度の水分が必要です。シューキーパーの選び方3. まとめ靴は身体の健康に影響しています。フィットした靴を選び、しっかりとケアすることは大切です。また、靴は心の状態にも影響を与えます。お気に入りのデザインの靴や履き心地の良い靴を履くだけでも気分がプラスにアップしますよね。靴はただ履くアイテムというだけではなく、「自分の状態を維持してくれるアイテム」です。ぜひ靴をもっと好きになって、身近に感じていただけると嬉しいです。4. エピソード靴を販売していた際によくあるご質問が「ビジネスシューズで履きやすい靴はないですか?」というご質問です。革靴を履き慣れている方は問題ないのですが、普段スニーカーがメインで、初めて革靴を履く方や履き慣れていない方にとっては、革靴特有の硬さがあり、履きづらく感じてしまうのも事実です。特にソール部分の硬さ(踏み心地)が気になる方が多いですね。私自身も履き始めの頃は、長時間履くとソールの硬さに悩まされることがありました。そうなると、どうしても革靴を履くのが億劫になってしまいますよね。そこで、初めての方や履き慣れない方によくおすすめしていたのが「ヴィブラムソール(Vibram)の靴」です。もちろん、ヴィブラムソールにもいくつか種類があり、硬いものから柔らかいものまでありますが、基本的にクッション性があり、さらに耐久性やグリップ力にも優れています。一般的な革靴の場合、慣れないうちは1日履くと足が疲れたり痛くなったりしがちですが、ヴィブラムソールの靴はそれらをかなり軽減してくれます。特に柔らかいタイプは、多くのお客様が気に入ってくださり、8~9割ほどの方が購入されていました。これから革靴を履く方や、革靴を履かなければいけないけど辛いという方には、お勧めです。【あわせて読みたい関連記事】スニーカーを長年愛用できるメンテナンス方法